E23-250 S C
中央秒と日付を備え、機械式と同等の仕上げを課されたパテック・フィリップの基幹クォーツ
E23-250 S Cは、パテック・フィリップが自社で手がける丸型クォーツの基幹キャリバーである。32,768Hzで発振する水晶振動子を基準とし、中央秒針と日付表示を備える。直径23.9mm、厚さ2.5mm、8石、部品数80。動力は1.55Vの酸化銀電池で、電池寿命は新品時で約3年とされる。同社は香箱も輪列の少ないクォーツにも、地板や受けの仕上げに機械式と同じ品質基準を課す。現行ではノーチラス7010、アクアノート5067、アクアノート・ルーチェなどに搭載され、近年は2タイムゾーンを表示するE23-250 S FUS 24Hへと派生している。
| Maker | Patek Philippe |
|---|---|
| Reference | E23-250 S C |
| Type | Quartz |
| Display | Analog |
| Jewels | 8 石 |
| Movement ⌀ | 23.9 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
電子計時への早い着手
パテック・フィリップとクォーツの縁は、量産時計の印象よりも古い。同社は1948年に電子部門を設けたとされ、機械式の枠を超えた計時技術に早くから取り組んできた。1960年代にはヌーシャテルの電子時計研究センター(CEH)に参画する。複数のスイス・メーカーと共同で、水晶式ムーブメントの開発にあたった。その成果が、1969年のRef.3587に初めて積まれた「ベータ21(Beta 21)」である。ベータ21は、腕時計用の水晶ムーブメントが広く市場に出た最初の世代の一つであった。当時のクォーツは高価な金無垢ケースに収められることも多く、安価な技術とは見なされていない。
共同開発から自社製へ
ベータ21は約6,000個で生産を終える。だが同社は電子計時の研究を続け、やがて自社設計のクォーツへと軸足を移す。そのなかで育ったのが、E23系の丸型クォーツである。初期の「E 23 SC」は、1980年代に登場したノーチラスのミッドサイズRef.3900に積まれた。Ref.3900は、ジャンボと呼ばれた大型のRef.3700に応えた一本である。より小ぶりで日常的なノーチラスを求める声に向けられ、薄型に収まるクォーツの利点を生かした。Ref.3900は1980年代半ばから1990年代半ばにかけて、比較的少ない数が作られたと伝わる。
E23-250 S Cという現行機
「E 23 SC」から型番の細分化を経て、現行の基幹機が「E23-250 S C」である。中央秒と日付という構成は初期から受け継ぎつつ、石数や部品構成が見直されている。現在はノーチラス7010やアクアノート5067、アクアノート・ルーチェの各モデルを動かす。機械式が主軸の同社にあって、クォーツの中核を担う一石である。Patekがクォーツを残すのは、日常の手軽さと、針回りの正確さを求める層への配慮による。近年にはこのキャリバーを基礎として、2つのタイムゾーンを表示するE23-250 S FUS 24Hが派生した。トラベルタイム機構をクォーツに組み込んだ、同社にとって珍しい複雑クォーツである。
技術解説
E23-250 S Cは、毎秒32,768回振動する水晶振動子を基準器とするクォーツ・キャリバーである。32,768という数は2の15乗にあたる。この信号を集積回路(IC)が分周することで、正確な1秒のパルスが生まれる。機械式の脱進機とテンプに代わり、ここでは水晶の安定した固有振動が時間の基準を担う。温度や姿勢の影響を受けにくい点が、クォーツ計時の精度の土台である。
分周された電気パルスは、ステップモーターを介して輪列へと伝えられる。秒針はこのモーターによって1秒ごとに歩進し、文字盤の中心軸に置かれる。クォーツでいう「中央秒(センターセコンド)」とは、秒針が小針ではなく中心に配される構成を指す。機械式のような滑らかな運針を意味する語ではない。日付表示も同じ輪列系から駆動され、E23-250 S Cは中央秒と日付という、実用に即した構成をとる。
数値を確認しておく。直径は23.9mm、厚さは2.5mm。石数は8石、部品数は80。動力は1.55Vの酸化銀電池で、電池寿命は新品時で約3年とされる。クォーツにおける石(ルビー)は、針を送る輪列の摩擦を抑える軸受として働く。回転の絶え間ない機械式ほど多くを要さず、8石は針回りの軸受を中心に配された結果である。電池形式は315が指定され、交換は専門の時計師に委ねることが前提とされる。
同社は、香箱もテンプも持たないクォーツであっても、地板・受け・輪列の仕上げに機械式と同じ品質基準を課すとしている。受けにはコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ縞)が施され、面取りや筋目仕上げも機械式キャリバーに準じる。電子部品を中核としながら、視覚的な作り込みを機械式と切り離さない姿勢が、同社のクォーツの性格である。これらのクォーツの多くはソリッドバックに収まり、仕上げが人目に触れる機会は少ない。それでも基準を緩めない点に、見えない部分を疎かにしない流儀がうかがえる。なお同社の品質規範であるパテック・フィリップ・シールは、ムーブメントから外装、アフターサービスまでを対象とする。クォーツ機もまた、こうした一貫した品質体制のもとで仕立てられる。
このキャリバーを基礎とした派生に、2タイムゾーンを表示するE23-250 S FUS 24Hがある。第2時間帯のための輪列と、6時位置のデイ&ナイト表示が加わる。部品数は96、石数は9へと増え、厚さも2.95mmへとわずかに増す。トラベルタイムをクォーツで成立させた点に、E23系の設計上の余地がうかがえる。