AP 4409
2020年の[Re]Master01で初登場した、Audemars Piguet自社製の一体型フライバック・クロノグラフ
Cal.4409は、Audemars Piguetが自社開発した自動巻きクロノグラフである。2019年に登場した一体型クロノグラフCal.4401から、日付機構を省いた派生にあたる。2020年、1940年代に着想を得た[Re]Master01に初搭載された。コラムホイールと垂直クラッチを備え、計測中でも一度の操作で復針と再始動が行えるフライバック機能を持つ。振動数は28,800vph (4Hz)、パワーリザーブは70時間、構成部品は349個。緩急針を持たない慣性モーメント可変式のテンプで歩度を整える。Royal OakやCode 11.59など、日付を持たない複数のモデルに搭載される。
| Maker | Audemars Piguet |
|---|---|
| Reference | AP 4409 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 40 石 |
| Power reserve | 70 h |
| Hands | Hours, Minutes |
| Chronograph | Chronograph, Column wheel, Flyback |
系譜と歴史
自社一貫体制への転換
Audemars Piguetは長く、クロノグラフの計時機構を外部に依存してきた。Jaeger-LeCoultreやF. Piguet(現Blancpain)の基礎ムーブメントに、計時モジュールを組む構成が主流であった。自社製の3126/3840という例外はあったが、これも計時機能を持たない基礎キャリバーへの追加であった。2019年、新コレクションCode 11.59と同時に発表されたCal.4401が、この状況を変える。基板から計時機構までを一体で設計・製造した、同社初のインテグレーテッド・クロノグラフであった。
[Re]Master01とCal.4409
Cal.4409は、このCal.4401から日付機構を取り除いた派生である。2020年、1943年製の一本を下敷きにした[Re]Master01(Ref.26595SR)に初めて搭載された。古典的な意匠でありながら、中身は最新世代という対比が、このモデルの主題であった。日付窓を持たない文字盤に合わせ、カレンダーを省いた4409が用意された。スモールセコンドを6時、30分計を9時、12時間計を3時に配する三つ目の構成を採る。9時の30分計には、半時間を知らせる赤い「45」の表示が残され、創業家三代目の好みを伝える細部となっている。
4400系の展開
4401を起点とする一連のキャリバーは、搭載コレクションに応じて姿を変えてきた。Royal Oak、Royal Oak Offshore、Code 11.59へと広がり、2021年にはサブダイヤルを縦に並べたCal.4404が加わる。これは1993年の初代Offshoreが採った縦配置への回帰であった。日付を持たないCal.4409もまた、複数のモデルへ搭載の場を広げている。
産業的文脈
2010年代後半、高級時計各社は計時機構の内製化を相次いで進めた。モジュール式から一体設計への移行は、操作感と仕上げの自由度を高める潮流であった。4400系は、その流れのなかでAudemars Piguetが示した回答である。外部供給に頼らず、自社の設計思想を計時機構にまで及ぼした点に、世代としての意義がある。
技術解説
一体型クロノグラフという設計
Cal.4409は、計時機構を独立モジュールとして後付けするのではなく、基板から一体で構成した「インテグレーテッド・クロノグラフ」である。基礎ムーブメントに計時ユニットを重ねる方式と異なり、歯車や部品の配置を最初から最適化できる。計時輪列を地板の段階から組み込むため、薄さと操作感の両立が図られている。直径は32mm、厚さは6.8mm、構成部品は349個を数える。日付機構を備える基盤のCal.4401より、部品点数はわずかに少ない。
コラムホイールと垂直クラッチ
始動・停止・復針を司るのは、円柱状の歯を持つコラムホイールである。溝カムで制御する方式に比べ部品点数は増すが、操作の節度感に優れるとされる。計時輪列との断続には、垂直クラッチを用いる。水平クラッチで生じやすい始動時のわずかな針飛びを抑え、スタートとストップの指針を安定させる。押し下げ感が滑らかなのは、この組み合わせによる。
フライバックと復針機構
フライバック機能により、計測中でも一度の操作で復針と再始動を続けて行える。周回計時のように、停止と復針の手順を省いて次の計測へ移れる点が利点である。ゼロ復帰を担うのは、ハート形のカムを叩くハンマーである。復針ボタンを押すと、操作レバーに駆動された各カウンターのハンマーがカムを打ち、指針を瞬時に基準位置へ戻す。この瞬間復針の機構には特許が与えられている。サファイアケースバックを通すと、コラムホイールとハンマーの一連の動作を観察できる。
テンプと精度
調速を担うテンプは、緩急針を持たない自由テンプ(フリースプラング)で、慣性モーメントを可変とする。テンプのリム上に置いた錘を調整して歩度を整える方式で、緩急針式に比べ衝撃後の安定に優れるとされる。振動数は28,800vph (4Hz)で、1秒間に8回の振動を刻む。高い振動数は、姿勢差や衝撃に対する安定に寄与する。香箱の設計により、70時間のパワーリザーブを確保する。
巻き上げと仕上げ
自動巻の動力は、ピンクゴールド製の両方向巻き上げローターが供給する。ローターの装飾は搭載モデルにより異なり、[Re]Master01ではクル・ド・パリ装飾が施される。地板やブリッジには、コート・ド・ジュネーブ、トレ・チレ(筋目仕上げ)、サーキュラーグレインといった手仕上げが及ぶ。面取りには磨きがかけられ、ケースバック側からも一連の仕上げを確かめられる。