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UNIVERSAL GENEVE · SERIES

Compax

コンパックス

1936年に3カウンター式クロノとして生まれ、Tri-CompaxからNina Rindtまでを束ねる三つ目の系譜

39.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Compax(コンパックス)は、1936年にユニバーサル・ジュネーブが発表したクロノグラフの系譜である。走秒・30分・12時間の3カウンターを備え、同社をクロノグラフの名門へと押し上げた。2カウンターのUni-Compax、フルカレンダーと月相を加えたTri-Compax、第二時間帯を備えるAero-Compaxへと枝分かれし、複雑時計の一族を形づくる。1960年代にはパンダ文字盤のスポーツクロノが登場し、F1ドライバーの妻ニーナ・リントが愛用した一本は「Nina」として知られる。長い休眠を経て、ブランドは2026年にCompaxを自社製キャリバーで再始動させた。

02 — STORY · 物語

Compax(コンパックス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

クロノグラフ専業が築いた「三つ目」

ユニバーサル・ジュネーブは1894年の創業以来、クロノグラフの設計と製造で名を上げた数少ないメーカーである。同社は2つのプッシュボタンを備えた近代的なクロノグラフの先駆けの一つとされ、1930年代には複雑時計の独自体系を築いていく。

その出発点が、2カウンター式の「Compur」と、それを発展させた3カウンター式の「Compax」であった。1936年に登場したCompaxは、走秒・30分積算計に加え、12時間積算計を第三のカウンターとして備える。ブランドはこれを12時間計を持つ最初の腕時計用クロノグラフと位置づけている。同年には2カウンター式がUni-Compaxとして整理され、のちのTri-CompaxやAero-Compaxを束ねる呼称体系が定まった。

これらのキャリバーは、ル・ポン=ド=マルテルにあったマーテル(ペラトン家)の工場で造られた。コラムホイールとオシレーティングピニオンによる伝統的な構造で、毎時18,000振動 (2.5Hz)。半世紀にわたり生産が続く、息の長い設計であった。

02

Tri-Compaxという頂点

1944年、シリーズは複雑機構の頂点に達する。曜日・日付・月・月相を一度に表示するフルカレンダー・クロノグラフ、Tri-Compaxである。ブランドはこれを工業的に量産された最初のフルカレンダー・クロノグラフと称し、当時もっとも複雑な腕時計の一つに数えられた。コレクターの間では「le glorieux(栄光の)」とも呼ばれる。

同じ頃、第二時間帯と備忘計を加えたAero-Compaxも加わる。文字盤上の四つ目のカウンターで別の時刻を管理する、旅する者のための一本である。大型化したCal. 285や287系が、こうした複雑機構を支えた。Compaxは単なる計時具ではなく、機能を足し引きして姿を変える「複雑時計の一族」へと育っていった。

03

マーテルを失い、バルジューへ

1950年代後半、転機が訪れる。長くクロノグラフ機械を供給してきたマーテルがゼニスに吸収され、1960年頃には自社系列のクロノグラフ・キャリバーの供給源を失う。ユニバーサル・ジュネーブはこの時期、スポーツクロノグラフの心臓部を、バルジュー72ベースの調達ムーブメントへと切り替えた。

この機械はユニバーサル・ジュネーブの刻印を受け、社内呼称が与えられたとされる。コラムホイール式の手巻クロノグラフという素性は、かつての自社系列と通じるものがあった。機械が変わっても、三つ目の文字盤というCompaxの顔は受け継がれていく。

04

ニーナ・リントとサーキットの記憶

1960年代、Compaxはスポーツクロノグラフとして新たな表情を得る。回転式タキメーターベゼル、ねじれた「ライアー(竪琴)」ラグ、そして白地に黒い積算計を沈めたパンダ文字盤。Ref. 885103がその代表である。

この時計が伝説となったのは、一枚の写真によってである。F1ドライバー、ヨッヘン・リントの妻ニーナ・リントが、サングラスに幅広のバンドストラップ姿でピットに立ち、この時計を腕に巻いていた。以来コレクターはこれを「Nina(ニーナ)」と呼ぶ。黒文字盤の反転仕様は「Evil Nina」、フルカレンダー版のTri-Compax Ref. 881101は、愛用したギタリストにちなみ「Eric Clapton」と呼ばれる。ヨッヘン・リントは1970年のイタリアGP予選で命を落とし、この時計は彼とニーナの記憶を宿す一本として語り継がれている。

05

沈黙の数十年

栄光は長くは続かなかった。1960年代後半、ユニバーサル・ジュネーブは米国ブローバの傘下に入り、アジアと北米へ販路を広げる。だがクオーツの波がすべてを変えた。1970年代、同社はクオーツや音叉式へと軸足を移すが、機械式で築いた評価は薄れていく。1975年には世界最薄をうたうクオーツCal. 74を発表したものの、ジュネーブの工場は採算が悪化し、1983年には経営危機に陥った。

1989年、ブランドは香港のステルックス・ホールディングスへと渡る。名は残ったが、かつての複雑時計の系譜は途絶える。2000年代に再起の試みもあったが続かず、Compaxは長い休眠に入った。

06

2026年、Compaxの再起動

転機は2023年に訪れた。ブライトリングを擁するパートナーズ・グループがブランドを取得し、ジョルジュ・ケルンの指揮のもとで再生計画が動き出す。2024年にはポーラルーターの記念三部作、2025年にはNinaへのオマージュ「Tribute to Compax」が発表された。後者は当時のCompaxとTri-Compaxを支えた28x系の手巻Cal. 281を再生して収め、わずか6本が用意された。

そして2026年、ユニバーサル・ジュネーブは本格的に再始動する。Compaxは現行コレクションへと戻り、白文字盤の「Nina」、反転仕様の「Evil Nina」、ミッドナイトブルーの金無垢が並ぶ。心臓部は新設計の自動巻Cal. UG-200。マイクロローターとコラムホイール、垂直クラッチを組み合わせた、同社の二つの十八番を束ねる機械である。ケース径は39.5mm、セラミックベゼルを備える。三つ目の系譜は、休眠を経て再び時を刻みはじめた。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Compaxの設計思想は、複雑さを読みやすさに従わせる点にある。

核にあるのはクロノグラフという機能であり、走秒・積算計・時間計を均等に配したサブダイヤルの構成は、登場以来ほとんど変わっていない。三つ、あるいは四つのカウンターを左右対称に沈め、針とインデックスのコントラストで瞬時に読み取らせる。装飾よりも視認性を優先するこの態度が、Compaxの文字盤を貫く規範である。

機械の側では、コラムホイールという選択が一貫する。カム式に比べて高価で手間のかかる構造だが、押し味の良さと作動の確実さを生む。マーテル製の自社系列から、バルジュー72ベースの調達機械、そして現行のCal. UG-200に至るまで、コラムホイールという素性は受け継がれた。新キャリバーがマイクロローターを組み合わせたのは、薄さを追ったポーラルーター世代の遺産でもある。複雑機構と薄型自動巻という、ユニバーサル・ジュネーブの二つの得意技がここで交わっている。

意匠の継承も明快である。1960年代のスポーツCompaxが確立した要素――ねじれたライアーラグ、回転式タキメーターベゼル、パンダ文字盤の黒白コントラスト――は、2026年の現行モデルへほぼそのまま引き継がれた。ケース径は36.5mmから39.5mmへと現代化し、夜光はトリチウムからスーパールミノバへ、ベゼルはアルミからセラミックへと素材を替えたが、腕に乗せたときの「Compaxらしさ」は損なわれていない。

同時代の競合と比べると、その性格は際立つ。ロレックスのデイトナやホイヤーのカレラが禁欲的な計器を志向したのに対し、Compaxはフルカレンダーや月相をスポーツケースに収めることをためらわなかった。ユニバーサル・ジュネーブは「時計の仕立屋(Le Couturier de la Montre)」を自任する。機能の網羅と装いの自由、その両立こそがCompaxを貫く設計言語である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1936-1940年代
Cal. 281 系
マーテル製コラムホイール手巻。Compax系の基幹。
1940年代-1950年代
Cal. 285 / 287 系
大型化した系列。Aero-Compaxの複雑機構に対応。
1960年代-1970年代
Valjoux 72 系 (UG Cal. 85 等)
マーテル離脱後の調達クロノ。Ninaに搭載。
2025
Cal. 281 (再生)
Tributeに収めたヴィンテージ手巻の再生品。
2026-
Cal. UG-200
マイクロローター一体型の自動巻コラムホイールクロノ。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1936-

三つ目クロノグラフの確立

Compax Uni-Compax
走秒・30分・12時間の3カウンター式。腕時計用時間計の原型。
1944-

フルカレンダー機の頂点

Tri-Compax
曜日・日付・月・月相を加えた最も複雑な一族の頂点。
1940年代後半-

第二時間帯を持つ旅の相棒

Aero-Compax
四つ目のカウンターで別時刻と備忘を管理する旅行者向け。
1960年代

Nina Rindt

885103
パンダ文字盤のスポーツクロノ。Valjoux 72を積む名作。
2025

復活第一作のオマージュ

Tribute to Compax
ヴィンテージCal. 281を再生して収めた6本限定の復活作。
2026-

自社製キャリバーで再始動

Compax Prêt-à-Porter
自動巻Cal. UG-200を搭載、39.5mmで現代化した現行作。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive