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UNIVERSAL GENEVE · SERIES

Cabriolet

カブリオレ

文字盤を裏返して守る反転ケース。アール・デコ期に着想され、幾度も復活を重ねてきた腕時計

01 — 概要 / SUMMARY

Cabriolet(カブリオレ)は、ユニバーサル・ジュネーブが1930年代前後に手がけた反転ケースの腕時計に連なる系譜である。長方形の内ケースを外枠の中で回し、文字盤と風防を内側に隠して守る機構を核とする。ブランドはこれを反転式腕時計の先駆と位置づけるが、発表年や「世界初」の主張には資料間で揺れがある。以後カブリオレは連続生産ではなく、節目ごとの復活として歴史を刻んだ。2026年、ブライトリング傘下での再出発に際し、手巻きのCal. UG-111を積む現行コレクションとして甦った。定番のPrêt-à-Porterと、ケース裏を絵で飾る限定のDe Lempickaがある。

02 — STORY · 物語

Cabriolet(カブリオレ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

アール・デコと「裏返す」という発想

1920年代のヨーロッパでは、幾何学的な造形を尊ぶアール・デコの美意識が時計にも及んでいた。腕時計はまだ新しい道具であり、剥き出しの風防をいかに守るかは現実的な課題だった。文字盤を覆う蓋、頑丈な枠——各社が解決策を競うなか、ひとつの大胆な着想が現れる。ケースそのものを裏返し、文字盤と風防を内側に隠してしまうという発想である。反転式の時計という概念は古く、1914年にはルイ・ヴァン・ベメルが反転式の時計で特許を取得したと伝わる。その概念を腕時計の意匠へと昇華させた一例が、ユニバーサル・ジュネーブのカブリオレであった。

02

初代カブリオレ——記録の分かれる出発点

初代の発表年は、資料によって記述が割れる。ブライトリング体制下の現行公式資料は、1933年に「Ideo(イデオ)」の名で登場したと記す。一方、ブランドが過去に公開してきた歴史年表やヴィンテージ専門筋は、1927年から1928年頃の登場とし、ジャガー・ルクルトのレベルソ(1931年)に先立つ反転式腕時計の先駆と位置づけてきた。2008年の復刻が「初代から80年」と銘打たれた事実は、後者の年代観と符合する。「世界初の反転式腕時計」というブランドの主張も、この年代の取り方で成否が変わるため、本稿では断定を避ける。

機構は明快である。長方形の内ケースが外枠に収まり、6時位置のネジを操作すると内ケースが外れ、回転させて文字盤を内側に向けて固定できる。8日巻きの長い持続時間を備えた個体も伝わる。ただし初代は数年で姿を消した。1931年に登場したレベルソの存在感の前に、商業的な成功には至らなかったとされる。Ideoの名は、やがて仏語で「幌型」を意味するカブリオレの通称に置き換わっていった。

03

概念の継承——ヤヌスとマイクロター・カブリオレ

カブリオレは連続して作られた系譜ではない。むしろ、節目ごとに呼び戻される概念として生き延びた。創業100年を迎えた1994年、ブランドはカブリオレに着想を得た「ヤヌス」を発表する。反転する文字盤の両面で時刻を読ませ、一方には跳ね数字(ジャンピングアワー)を備えた仕掛けだったと伝わる。

次の節目は2008年。初代から80年を期し、バーゼルワールドで「マイクロター・カブリオレ」が披露された。長方形の反転ケースに、自社開発の自動巻きマイクロター・キャリバーUG 101を収めた一本である。毎時28,800振動 (4Hz)、30石、約42時間のパワーリザーブ。6時位置に3日分を示す日付窓を持ち、サファイアの裏蓋越しに機構を覗かせた。香港のステルックス体制下での再興を象徴する意欲作だった。

04

ブライトリング体制での全面復活

長い休眠の後、転機は2023年に訪れる。ブライトリングを擁する投資会社パートナーズ・グループらがユニバーサル・ジュネーブを取得し、ブランドは再起動へ向かった。2024年にはポールルーターの記念モデルが先触れとして披露され、2026年、四つのコレクションとともに本格的な復活が告げられる。カブリオレもそのひとつだった。

現行のカブリオレは、異形(シェイプド)の手巻きキャリバーUG-111を心臓に据える。27 × 17.5mm、厚さ3mmという薄型で、フリースプラング・テンプ、毎時21,600振動 (3Hz)、約72時間のパワーリザーブを持つ。ケースは24.2 × 45mm、厚さ8mm。鋼または18Kローズゴールド製で、裏面はわずかに凹ませて装着感を高めた。定番のPrêt-à-Porterは鋼とローズゴールドで複数の漆ダイヤルを揃え、鋼×ブルーのUGCA006、ローズゴールド×ホワイトのUGCA001、同×ブラックのUGCA002、グリーンのUGCA003、ダイヤモンドを44個あしらった赤文字盤のUGCA004が並ぶ。

05

文字盤の裏という余白

カブリオレが反転ケースで守ってきた「裏面」は、現行世代で意味を変えた。透明な裏蓋とすれば機構が見え、無地とすれば彫刻や絵付けの余白となる。限定のCapsule(カプセル)エディション「De Lempicka(ドゥ・レンピッカ)」は、画家タマラ・ド・レンピッカの作品を手描きで写した一点物で、15本に限られる。文字盤に並ぶ角張った数字は、アール・デコを代表する書体「ビフュール」を手がけたカッサンドルの造形を引く。守るための裏返しが、表現のための裏返しへと読み替えられた——それが現代のカブリオレの立ち位置である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

カブリオレの設計を貫く思想は、時計を「裏返せる小さな建築」として扱う点にある。中核は、長方形の内ケースを一回り大きな外枠に収め、6時位置の操作で内ケースを外して回転させる反転機構だ。70年以上を隔てた初代と現行とでは、ケース寸法もキャリバーも素材も異なる。それでも一目でカブリオレと分かるのは、この「枠の中の可動ケース」という骨格が変わらないからである。縦長の長方形という比率、内ケースと外枠が描く二重の輪郭——この基本形が、世代を超えた識別の核となっている。

意匠の基調はアール・デコの幾何学にある。直線で構成された長方形、磨きとヘアラインの対比が生む面の表情、外枠の内側に施された絡み合うロゴ装飾。装飾過多に走らず、構造そのものを見せる構えが一貫する。文字盤には角張ったビフュール調の数字が置かれ、書体が時代の出自を物語る。

機能面で重視されるのは、ただ一点——風防と文字盤を守ること。これが反転機構の存在理由である。同じ反転式でも、ジャガー・ルクルトのレベルソはポロ競技での保護と裏面への彫刻という物語を持ち、カルティエのタンク バスキュラントは枠ごと傾ぐ機構で知られる。三者はいずれも1930年代前後に現れた反転式だが、解き方はそれぞれ異なる。カブリオレはこれらと優劣で並ぶものではなく、内ケースを抜いて回すという独自の所作で輪郭を描く。

プロポーションにも自制が働く。ダイバーズのような厚みや誇張した色を求めず、薄さと面の静けさを保つ。これは「装着して品よく収まる長方形」というドレスウォッチの立ち位置を選んだ結果である。

現行世代は、その「裏面」の意味を更新した。守るための面を、機構を見せる窓、あるいは絵を描く余白へと転じたのである。変えなかったのは骨格、変えたのは裏面の用途。この線引きにこそ、カブリオレが反転ケースという一点に賭け続けてきた設計の芯がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1927-1933 頃
手巻き(8日巻き仕様)
長い持続時間を備えた初期の手巻き機構。
2008
Microtor UG 101
自動巻きマイクロター。毎時28,800振動・30石。
2026-現在
Cal. UG-111
異形の手巻き。3Hz・約72時間リザーブ。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1927-1933 頃

初代カブリオレの原型

Ideo Cabriolet
長方形の反転ケースで文字盤を守る初代。発表年は資料で割れる。
2008

マイクロター・カブリオレ

Microtor Cabriolet
初代から80年の復刻。自動巻きマイクロターUG 101を搭載。
2026-現在

現行プレタポルテ世代

UGCA001 UGCA004 UGCA006 ほか
ブライトリング体制で全面復活。手巻きUG-111と裏面の余白。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

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