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ORIS · SERIES

Artix

アーティックス

多層構造のケースと立体ダイヤルで、オリスのCultureを現代へ拡張したドレス・スポーツの系譜。

01 — 概要 / SUMMARY

アーティックス (Artix) は、2009年前後にオリスが「Culture」ワールドへ投入した現代的なドレス・スポーツの系譜である。多ピース構造のケースと、中央を沈めた立体的な多層ダイヤルを共通言語とし、保守的なアートリエとは異なる輪郭を描いた。三針のArtix Date、三重カレンダーと月相を備えるArtix Complication、モータースポーツの意匠を採り入れたArtix GTなど、機構の幅は広い。手の届く価格帯で機械式の多様な表情を示した、2010年代のオリスを象徴する一群である。

02 — STORY · 物語

Artix(アーティックス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「Culture」という出自

オリスは長く、ダイバーズやパイロットといった実用時計の作り手として知られてきた。その一方で、ドレスの文脈を担う「Culture」ワールドを持つ。2003年に始まった古典的なアートリエがその核であったが、より現代的な造形を求める領域は手薄であった。アーティックスは2009年前後、この空白を埋める存在として登場したと考えられる。狙いは明快で、保守に寄りすぎないドレス・スポーツの輪郭を描くことにあった。手の届く価格で機械式を提供するという、オリスの一貫した姿勢もここに通じている。

02

多層構造というシリーズ言語

始動期を担ったのは、三針デイトのArtix Dateと、針で日付を指すArtix Pointer Dayである。共通するのは、複数のパーツを重ねた多ピース構造のケースと、中央を沈めた立体的なダイヤルだった。同心円状の削り出しとガルバニック処理が光を受け、平面に奥行きを与える。径はおおむね42mm、防水は100m (10気圧) を確保し、日常での実用に足る。裏蓋はシースルーとされ、オリスの象徴である赤いローターが覗く。針で日付を指すポインターカレンダーは1938年のビッグクラウンに遡る伝統であり、ここで現代の文脈へ置き直された。

03

モータースポーツの系譜とGT

オリスとモータースポーツの縁は、1970年代のクロノリスに始まる。2000年代のウィリアムズF1との協業もよく知られる。この遺伝子を受け継いだのがArtix GTである。両回転ベゼルにはセラミックインサートと、オリスが開発したラバー製の「グッドグリップ」を備えた。文字盤にはタキメーターが置かれ、競技計器の気配を帯びる。初期のArtix GT Chronograph (Cal. 674、Valjoux 7750ベース) は44mm径で、9時位置の秒表示を回転計のように伸ばすリニア・レトログラード機構を持つ。これはオリス独自の試みとされる。2016年前後の改良では表示が一般的な三つ目へ移り、Sellita SW 500を基とするCal. 774が用いられた。GTにはデイトやデイデイト、スケルトンも揃う。

04

複雑機構への手の届く道

アーティックスは、複雑機構を身近にする役割も担った。2010年のArtix Complication (Cal. 915) は、Sellita SW 200-1にデュボア・デプラのモジュールを重ね、ポインターデイトに曜日・月・月相を加えた。中央のダイヤルで日付を指す構成は、視認性と古典味を両立させる。月相をポインター表示としたArtix Pointer Moon、機械を露出させたSkeleton (Cal. 734) も派生した。デイトにはCOSC認定のArtix Chronometer (Cal. 737) も用意され、実用精度の選択肢を広げた。いずれもETAの供給事情を背景に、Sellita製のベースを広く採っている。

05

ジャズと天文の限定

オリスはジャズとの結び付きが深く、マイルス・デイヴィスらの名を冠したコレクションを重ねてきた。アーティックスでも、ピアニストのオスカー・ピーターソンを記念したクロノグラフが作られた。月相を備える系譜には、天文学者ティコ・ブラーエの名を冠した限定もある。いずれも文化と機構を緩やかに結ぶ試みであった。

06

現在地

近年のオリスは、ワールド構成の整理を進めている。2024年にはアートリエが「アーバン・ドレスウォッチ」として刷新され、ドレスの主役を担い直した。アーティックスの多くの参照番号は、現行カタログから姿を消しつつあるとされる。とはいえ、手頃な価格で機械式の多様な顔を示したこの系譜は、2000年代末から2010年代のオリスを語るうえで欠かせない一章である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

アーティックスの設計思想は、「平面に奥行きを与える」という一点に集約できる。多くのモデルが、複数のパーツを積層した多ピース構造のケースを採る。傾斜したラグとベゼルが段差を生み、光の当たり方で表情が変わる。装飾のための装飾ではなく、構造そのものを意匠とする発想である。径はおおむね42mmに収まり、過度に主張しない。

ダイヤルも同じ論理で作られる。中央を一段沈め、同心円状の削り出しとガルバニック処理を施す。外周にはアプライドインデックスを載せた章節リングが立ち上がる。二つの面が段差で隔てられ、文字盤は立体物として読まれる。三針でも複雑機構でも、この多層構造は共通する。アーティックスを一目で識別させるのは、個々の機構ではなくこの面構成である。

色数は抑えられている。文字盤はマットシルバー、ダークブルー、ブラックなどが中心で、植字や針は地と色調を合わせる。多層構造で生む陰影を主役に据え、色や装飾の過剰を避ける判断がうかがえる。

姉妹格のアートリエが丸みと薄さで古典に寄るのに対し、アーティックスは段差と陰影で現代を志向した。同じCultureワールドにありながら、両者は役割を明確に分けている。Artix GTはこの語彙にモータースポーツの符牒を加えた系統で、両回転ベゼル、ラバーグリップ、タキメーター、回転計を思わせる秒表示がそれにあたる。

変わらなかったのは、視認性への配慮である。アプライドの植字とスーパールミノバ、太さを抑えた針は、立体的なダイヤルの上でも時刻を素直に伝える。100m防水とシースルーバックは、実用と機械への愛着を両立させる構えでもある。奥行きを与えながら読みやすさを損なわない。アーティックスの抑制は、その均衡の上に成り立っている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2009-
Cal. 733 / 734 系 (Sellita SW 200-1)
三針・日付・スケルトンの基幹。Sellita系。
2009-
Cal. 755 / 761 系 (Sellitaベース)
ポインター表示と月相を駆動する自動巻。
2010-
Cal. 915 (SW 200-1 + モジュール)
三重カレンダーと月相をモジュールで付加。
2009-2015頃
Cal. 674 (ETA Valjoux 7750)
クロノ初代。レトログラード秒を備える。
2016頃-
Cal. 774 (Sellita SW 500)
クロノ改良世代の自動巻ベース。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2009頃

三針とポインターデイト

733 7642 755 7691 系
多ピースケースと立体ダイヤルで始動した基本形。
2009頃

GTのモータースポーツ表現

674 7661 系
セラミックベゼルとリニア秒で競技の色を加える。
2010

三重カレンダーと月相

915 7643 系
ポインターデイトに曜日・月・月相を統合した複雑機構。
2010年代前半

月相とスケルトンへ展開

761 7691 734 7751 系
Pointer MoonやSkeletonへ意匠を広げた派生群。
2016頃-

GTクロノの改良世代

774 7750 系
三つ目化し、Sellita SW 500系のCal. 774へ移行。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Movements - Oris 公式 · Oris · 2026.08.15 閲覧 Oris · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Sellita Caliber SW200-1 専門メディア · Caliber Corner · 2026.08.15 閲覧 Caliber Corner · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive