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H. Moser & Cie · Pioneer · 2019

Pioneer Centre Seconds DLC / Funky Blue

漆黒のDLCケースに看板色ファンキーブルーを初めて掛け合わせた、2019年発表のパイオニア最大胆作

3200-1205は、2019年7月に発表されたパイオニア・センターセコンドのブラックDLC仕様である。硬質炭素皮膜で黒く覆った42.8mmのスティールケースに、ブランドの看板色ファンキーブルーのフュメ文字盤をパイオニアとして初めて組み合わせた。搭載するのは自社開発の自動巻きCal.HMC 200で、120m防水とラバーストラップが日常での使用を支える。限定版ではなく通常コレクションの一本だが、発表に際して実機1本を世界中の愛好家へ順に手渡す「パイオニア・ツアー」が展開され、コレクションの冒険的な性格を象徴するモデルとなった。

Ref. 3200-1205
発表年 2019
状態 現行品
限定 限定 100
コレクション Pioneer
カテゴリ ドレススポーツ
キャリバー HMC 200
ケース径 42.8 mm
防水 120 m
関連人物 ハインリヒ・モーザー
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.12
Case · ケース
素材 Stainless Steel
形状 Round
42.8 mm
厚さ 15 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Open
防水 120 m
Movement · ムーブメント
キャリバー HMC 200
タイプ Automatic
振動数 21,600 bph
石数 27 石
パワーリザーブ 72 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Blue
インデックス Stick / Dot
Feuille
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

エレガンスの家が作ったスポーツウォッチ

H. モーザーは、フュメ文字盤と貴金属ケースを組み合わせたエレガントな時計で知られる独立メーカーである。その同社が2015年に立ち上げたのがパイオニア・コレクションであり、補強されたケースと120m防水を備えた「日常で使えるモーザー」を提示した。2016年には三針の3200-1200が加わり、ブランドとして初めてスティールケースを通常コレクションに採用する転換点となった。ミッドナイトブルーのフュメ文字盤を持つこの基準作に続き、2018年にはコスミックグリーンの3200-1202が登場し、文字盤の色でシリーズを広げる路線が定まっていく。

黒いケースとファンキーブルー

3200-1205は、この流れの中で2019年7月に発表された。主題は2つある。第1にケースで、スティールにDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)と呼ばれる硬質炭素皮膜を施し、当時のコレクションでは例の少ない漆黒の外装とした。第2に文字盤で、エンデバーの永久カレンダーなどで知られる看板色「ファンキーブルー」をパイオニアに初めて導入した。鮮烈な青と漆黒の対比は、抑制を美学とする同社としては異例に大胆な組み合わせであり、発表時の専門メディアはこれを「ブランド史上最も大胆なパイオニア」と評した。フュメ文字盤の流行が業界全体に広がるなか、その元祖を自認するモーザーが本家としての色の引き出しを示す狙いがあったと見ることもできる。

所有ではなく体験を回す「パイオニア・ツアー」

発表と同時に、モーザーは実機1本の3200-1205を世界中の愛好家に巡回させる「パイオニア・ツアー」を開始した。経路をあらかじめ定めず、1人が1週間だけ着用して写真を共有し、自ら選んだ次の人物へ手渡すという実験的な企画である。SNS時代の独立ブランドらしいコミュニティ施策であり、3200-1205は単なる色違いの追加ではなく、パイオニアというコレクションの冒険的な性格を体現する役割を担った。

後継への引き継ぎ

3200-1205は限定版ではなく、通常コレクションとして販売が続いた。2024年、パイオニア・センターセコンドはムーブメントを改良型のCal.HMC 201へ世代交代させ、40mmケースの追加を柱とする刷新を受ける。現行ラインアップで黒DLCケースとフュメ文字盤の組み合わせは、スパイスド・アクア文字盤の3201-1205に引き継がれており、3200-1205はその路線の起点に位置づけられるリファレンスである。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

ケースは径42.8mm、風防を除く厚さ10.6mmで、寸法は同世代のスティール版と共通である。違いは表面処理に集約され、全面にブラックDLCを施しながら、ポリッシュとサテンの仕上げ分けを皮膜の下に残している。光を受けると黒一色の中に質感の差が浮かび、無垢のスティール版より視覚的に引き締まって見える効果を生む。ケースサイドには段差状の彫り込みが入り、ねじ込み式のコニカルリューズには「M」の意匠が刻まれる。風防はドーム型サファイアで、シースルーバックと合わせて両面にサファイアを用いる構成である。

文字盤はファンキーブルーのフュメ仕上げで、中心の鮮やかなエレクトリックブルーが外周に向かって深い青へ沈み込み、サンバースト模様がグラデーションに奥行きを与える。ケースに合わせてアプライドインデックスと木の葉型の針は黒く処理され、スーパールミノバ(蓄光塗料)が夜間の視認性を確保する。表示は時・分・センターセコンドのみで日付を持たず、印刷はロゴだけという削ぎ落とした構成が、フュメの色彩を主役に立てる。

ムーブメントは自社開発の自動巻きCal.HMC 200である。毎時21,600振動 (3Hz) で駆動し、双方向に巻き上げる爪式の巻き上げ機構により最低72時間のパワーリザーブを確保する。姉妹会社プレシジョン・エンジニアリング製のストローマン・ヒゲゼンマイ(フラットオーバーコイル付きの自社製ヒゲゼンマイ)を備え、秒針停止機能も持つ。ローターにはブランドロゴが刻まれ、受けにはモーザーストライプが施される。ストラップはパンチング加工の黒ラバーで、バックルもケースに合わせて黒く仕上げられる。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

3200-1205は2019年7月初旬、見本市ではなくブランド独自の発表として公開された。発表時の本国価格は13,250ユーロ(税抜)と案内され、限定版ではなく通常コレクションへの追加として位置づけられた。

発表と同時に「パイオニア・ツアー」が始まる。最初の1本はブランドと親交のある顧客の手に渡り、そこから1週間ごとに次の愛好家へ手渡されて世界を巡った。行程は事前に定められず、各保有者が撮影した着用写真がInstagramのハッシュタグ#PioneerTourと専用ページで共有される仕組みであった。

生産期間中に文字盤やケースの公式な仕様変更は確認されていない。2024年、パイオニア・センターセコンドはCal.HMC 200を改良したCal.HMC 201への世代交代と40mmケースの追加を柱とする刷新を受け、インデックスとロゴを省いたコンセプト文字盤のシトラスグリーン(3201-1204)などが加わった。この刷新を経て、3200-1205は公式サイトの現行ラインアップから外れており、黒DLCケースとフュメ文字盤の組み合わせは40mmの3201-1205(スパイスド・アクア)へ受け継がれている。生産終了が公式に告知された記録は確認できないものの、実質的に役割を終えたリファレンスと言える。