Vintage 1945
1940年代のアールデコの角型を源流に、上下左右へ湾曲するケースで手首に沿わせた1995年生まれのシリーズ。
ヴィンテージ1945は、ジラール・ペルゴが1995年に始めた角型時計のシリーズである。1940年代のアールデコ様式の角型を源流とし、上下左右に湾曲するケースとサファイアクリスタルが手首に沿う。アラビア数字、ドーフィン針、レイルウェイの分目盛りといった原型の語彙を受け継ぎ、大型のXXL、特許のラージデイトとムーンフェイズ、三つの金の橋のトゥールビヨンを収めたモデルまでを展開してきた。現行はXXL ラージデイト&ムーンフェイズを中心に構成される。
Vintage 1945(ヴィンテージ1945)、これまでの軌跡
1995年の再生
原型に再び光が当たるのは1990年代である。1992年に同社を買収して社長に就いたルイジ・マカルーソは、自社の古典的なモデルの復刻を計画した。1994年には創業203年を記念し、角型の古典モデルを復刻した「ヴィンテージ94」を世界203本限定で発表して成功を収めている。
翌1995年、同社の博物館が1940年代の時計2本を買い戻したことを手がかりに、ヴィンテージ1945が生まれた。マカルーソは、アールデコを基にした意匠がかえって現代的に受け止められると考え、角型を持たなかったラインナップに角型を加える意味も重視したと語っている。限定品として計画されたが反響が大きく、定番品となった。なお再生を2004年とする記事もあるが、同社の説明は1995年である。
機構の広がり
1995年以降、シリーズにはさまざまな派生が加わった。2004年には、同社の象徴である三つの金の橋のトゥールビヨンが初めてヴィンテージ1945のケースに収められた。2008年には、エナメル文字盤にオフセンターの時分表示とパワーリザーブ表示を備えた36×37mmのモデル(自動巻キャリバーGP01900)が登場している。
大型のXXLも早くから展開された。2012年末にはXXLクロノグラフが3カウンターから2カウンターへ改められ、ラグとプッシャーが短くなり、日付が省かれた。機械はGP3300系をベースとするCal.GP03300-0064で、ケースは36×37mmである。2013年には、XXLのラージデイト&ムーンフェイズとクロノグラフにチャコールグレーの文字盤とブレスレットが用意された。
透明な文字盤と特許のラージデイト
2014年2月には、XXLスモールセコンドに初めてブルーの文字盤が加わった(36.20×35.25mm、Cal.GP03300-0051)。同年11月には、スモーク調のサファイア文字盤を持つラージデイト&ムーンフェイズが発表された。12時下の大型日付は、極薄の2枚のディスクで十の位と一の位を表示し、数字の間に切れ目が見えない同社の特許機構である。透明な文字盤越しに日付ディスクや月齢の円盤が透け、所定の窓に来たときだけ数字がはっきり浮かぶ。
2015年には原型から70年、再生から20年を記念し、金とスティールを組み合わせたスモールセコンドと、三つの金の橋のトゥールビヨンの限定版(18本、宝石付き8本)が発表された。2019年にはピンクゴールドケースに青いポリクリスタル文字盤を組み合わせた仕様が、2020年にはオニキス文字盤のインフィニティ・エディションが加わった。
現在地
現行のコレクションは、スティールのXXL ラージデイト&ムーンフェイズ、チタンケースのアース・トゥ・スカイ・エディション、インフィニティ・エディションで構成される。30年の間に移り変わってきたのはサイズと機構、文字盤の素材であり、曲面で成り立つ角型という最初の判断は今も保たれている。
意匠を貫く設計言語
ヴィンテージ1945の設計を貫く判断は明快である。長方形のケースを、徹底して曲面で成り立たせること。ケースとサファイアクリスタルは上下にも左右にも湾曲し、裏側も手首に沿うよう大きく反る。同社は、直線のケースより凸面の成形が難しいことを認めたうえで、この造形を選んでいる。
湾曲したケースの内側には、丸形の自社製GP3300系が収まる。円い機械を角型の器へどう落とし込むかは、シリーズの技術的な主題であり続けた。ラージデイトのモジュールやトゥールビヨンを収めるたびに、文字盤の配置が練り直されてきた。
意匠の語彙は原型から一貫している。アプライドのアラビア数字、手作業で湾曲させたファセットのドーフィン針、レイルウェイの分目盛り、6時位置のスモールセコンド。ケースの12時と6時の側にはガドルーンと呼ばれる縦の段が刻まれ、文字盤の両端を区切る。円錐形に細るラグも、アールデコの建築的な印象を強める。湾曲した文字盤は見る角度で表情を変え、平面の角型にはない奥行きを与える。金のケースでは針や数字、インデックスも金色とし、月齢の円盤に深い青を用いた仕様もある。
同時代の角型としては、ジャガー・ルクルトのレベルソがしばしば引き合いに出される。ただし反転機構と平面の意匠を選んだそれに対し、ヴィンテージ1945は曲げるという難路を選んだ点で輪郭が異なる。曲面は装着感であると同時に、シリーズを一目で識別させる記号でもある。
そして自制がある。防水は30mにとどまり、道具ではなくドレスウォッチの領分を守る。トゥールビヨンのような高級機構を収めてもアールデコの端正さを崩さない。変えてきたのはサイズと機構、変えなかったのは曲面の角型という佇まいである。
ムーブメントの変遷
Ref. 変遷
アールデコの原型モデル
先行した角型の復刻
1995年のシリーズ再生
三つの金の橋を角型に
XXLクロノグラフの改良
ラージデイト&ムーンフェイズ
原型70周年の記念限定版
出典
本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。
- 01 専門メディア Girard-Perregaux Iconic 1966 And Vintage 1945 In Blue
- 02 専門メディア 2019年 ジラール・ペルゴ新作 ヴィンテージ 1945 XXL ラージデイト ムーンフェイズ
- 03 専門メディア Girard-Perregaux Vintage 1945 Large Date and Moon-Phases (Live Photos and Price)
- 04 専門メディア Introducing - Girard-Perregaux 1966 and Vintage 1945 Infinity Editions
- 05 専門メディア New Dial for Girard-Perregaux Vintage XXL Large Date & Moon Phases and Vintage XXL Chronograph
- 06 専門メディア New Girard-Perregaux Vintage 1945 XXL Chronograph
- 07 専門メディア new releases from Girard-Perregaux
- 08 専門メディア 70th anniversary of the Vintage 1945
- 09 専門メディア Exploring the Origin of the Name of the Girard-Perregaux "Vintage 1945"