設計思想
限定復活から恒久コレクションへ
このRefが生まれる起点は2016年にある。ジラール・ペルゴは同年のBaselworldで、創業225周年を記念したロレアートの限定復活モデル(Ref.81000-11-431-11A、41mm、各225本)を発表した。1975年に生まれ、長らくカタログから姿を消していたロレアートの再登場は好意的に迎えられ、ブランドはこれを一過性の記念企画で終わらせない決断を下す。
翌2017年1月、ジラール・ペルゴは4年ぶりにSIHHへ復帰し、その目玉として新世代ロレアートのフルコレクションを発表した。トゥールビヨン搭載の45mmを頂点に、42mm、38mm、クォーツの34mmまで、総数30型を超える大規模な展開である。81005-11-431-BB6Aは、この初年度ラインナップに含まれる38mm自動巻きの1本だった。背景には、ステンレススチール製ラグジュアリースポーツウォッチへの需要が急速に高まっていた当時の市場環境がある。
なぜ38mmだったのか
225周年記念モデルは41mmだったが、恒久コレクション化にあたりジラール・ペルゴは三針モデルを38mmと42mmの2径に分けた。38mmという選択は、ケース一体型ブレスレットを持つこの種の時計としては小ぶりだが、1975年の初代ロレアートに近いプロポーションへの回帰でもある。ユニセックスでの着用を想定した戦略的なサイズ設定だった。
機構面でも2径は分けられた。42mmが新世代のCal.GP01800を積むのに対し、38mmには実績ある自社製Cal.GP03300が充てられた。直径25.95mmの小径ムーブメントであり、38mmケースとの整合を優先した割り当てといえる。
ブルー×ストラップという立ち位置
初年度のスティール製38mmには、シルバー、ブルー、グレーの3色の文字盤が用意され、それぞれにブレスレット仕様とアリゲーターストラップ仕様が存在した。本Refはブルー文字盤のストラップ仕様にあたり、ブレスレット仕様の81005-11-431-11Aと兄弟関係にある。
ブルーのクル・ド・パリ文字盤は、2016年の記念モデルから引き継がれた新生ロレアートの顔である。そのブルーをブレスレットではなくレザーで受けた本Refは、ラグジュアリースポーツの文法から半歩引いた、ドレス寄りの解釈を提示した。一体型ブレスレットが象徴となったこのジャンルで、ストラップ仕様はあえて静かな選択肢として機能した。
その後の系譜
38mmの三針スティールモデルには、2020年頃にブラック文字盤(81005-11-632-11A)が加わったとされる。その後、本Refを含む初期世代のリファレンスはカタログから外れ、2022年のコッパー文字盤以降、38mmは新しいリファレンス体系(末尾1CM)へ移行した。2024年にはセージグリーンとミッドナイトブルー(81005-11-3460-1CM)が登場し、後者が事実上、本Refのブルーの系譜を受け継いでいる。
意匠分析
81005-11-431-BB6Aの設計は、シリーズの記号を38mm径へ正確に縮小しながら、ストラップによって性格を変えた点に特徴がある。
ケースは直径38mm、厚さ10.02mmのステンレススチール製で、サテン仕上げを基調にポリッシュを切り分ける。ロレアートの核心である八角形ベゼルは、ポリッシュ仕上げの円形ベースの上にサテン仕上げの八角形を重ねた2層構造で、丸と角の中間的な表情を生む。ロイヤル オークの鋭い八角形とも、ノーチラスの丸みとも異なる、このシリーズ固有の造形である。
文字盤はブルーのクル・ド・パリ(ホブネイル)装飾。細かなピラミッド状の刻みが光の角度で濃淡を変え、単色のブルーに奥行きを与える。インデックスとバトン型の時分針は植字・夜光仕様で、3時位置に日付窓を備える。装飾文字盤ながら視認性を損なわない、抑制の効いた構成といえる。
本Refを兄弟機から分けるのはストラップである。ブレスレット仕様の81005-11-431-11Aに対し、本Refはケースに一体化するアリゲーターストラップを採用する。文字盤と同系色のレザーが手首側の金属量を減らし、10mm強の薄型ケースと相まって、スポーツウォッチというよりドレスウォッチに近い装着感をもたらす。ラグ幅は24mmで、一体型設計ゆえ汎用ストラップへの交換は想定されていない。
シースルーバックからはCal.GP03300(本Ref搭載仕様はGP03300-0030とされる)が見える。部品数218、27石、毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブ約46時間。コート・ド・ジュネーブやペルラージュ、面取りを施したブリッジに、ピンクゴールド製ローターが映える。防水性能は100m防水で、レザーストラップ仕様としては十分な余裕を持つ。
系譜と歴史
前史として、2016年3月のBaselworldで創業225周年記念のロレアート限定モデル(41mm、Ref.81000-11-431-11A等)が発表され、復活への道筋がつけられた。
本Refの発表は2017年1月、ジュネーブのSIHHである。ジラール・ペルゴはこの年Baselworldを離れてSIHHに復帰し、新世代ロレアートのフルコレクションを披露した。38mm自動巻きのスティールモデルはシルバー、ブルー、グレーの3文字盤で展開され、本Refはブルー文字盤のアリゲーターストラップ仕様として初年度から名を連ねた。日本市場では同年4月以降に発売されたと伝わる。
生産期間中、本Ref自体に公表された大きな仕様変更は確認されていない。一方、38mmファミリーには変化が続いた。2017年から2018年にかけてセラミックモデルやクロノグラフ(81040系)が追加され、2020年頃にはブラック文字盤の三針モデル(81005-11-632-11A)が加わったとされる。
その後、初期世代の38mm三針リファレンスは順次カタログから外れた。本Refの正確な生産終了時期は公表されていないが、2022年10月に新リファレンス体系のコッパー文字盤が登場した時点で、現行ラインは新世代へ移行している。2024年11月にはセージグリーンとミッドナイトブルー(81005-11-3460-1CM)が追加され、ブルー系文字盤の38mmはこの新Refへ引き継がれた。2025年のシリーズ誕生50周年を、本Refはすでに生産を終えた初期世代として迎えている。