本文へ
Chopard · Classic Racing · 2008

Mille Miglia Chronograph Black / Bracelet

限定中心のミッレ ミリアに常設機として置かれた42mmクロノグラフ、その鋼ブレスレット仕様

158511-3002は、2008年頃に登場したとされるショパール「ミッレ ミリア クロノグラフ」の黒文字盤・スティールブレスレット仕様である。42mmのステンレススティールケースにCOSC認定のETA2894-2を搭載し、クラシックカーの計器盤を思わせる文字盤を持つ。毎年の限定レースエディションが主役となるコレクションのなかで、年式に縛られない常設モデルとして長く販売された、シリーズの基準点と呼べる1本である。

Ref. 158511-3002
発表年 2008
状態 現行品
限定 通常生産
コレクション Classic Racing
カテゴリ クロノグラフ / レーシング
キャリバー 2894-2
ケース径 42 mm
防水 50 m
クロノグラフ デイト
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.12
Case · ケース
素材 Stainless Steel
形状 Round
42 mm
厚さ 12.31 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Open
防水 50 m
Movement · ムーブメント
キャリバー 2894-2
タイプ Automatic
振動数 28,800 bph
石数 37 石
パワーリザーブ 42 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Black
インデックス Arabic Numerals
Stick
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

限定の祭典と、定番の不在

ショパールは1988年からイタリアのクラシックカーレース「ミッレ ミリア」のオフィシャルタイムキーパーを務め、毎年のレースに合わせた限定エディションを発表し続けてきた。参加ドライバーに時計が贈られる伝統も含め、コレクションの主役は常に「その年のモデル」であった。しかし年式と本数に縛られた限定だけでは、いつでも店頭で出会える顔が育たない。2008年頃に登場したとされるRef.8511系のミッレ ミリア クロノグラフは、この空白を埋める常設機として位置づけられた。

ブレスレットという回答

8511系の展開は、タイヤトレッド柄ラバーストラップの168511系と、スティールブレスレットの158511系に分かれる。158511-3002は後者の黒文字盤仕様である。ダンロップのヴィンテージタイヤを模したラバーがこのシリーズの象徴である以上、ブレスレット仕様は一見傍流に映る。だが金属ブレスは服装や季節を選ばず、限定機の祝祭性から距離を置いた「毎日の道具」としての性格を際立たせた。銀文字盤の158511-3001、コンビ素材の158511-6001/6002と並び、黒文字盤の本Refは最も計器盤的な、シリーズの原イメージに近い顔を担った。

同時代のミッレ ミリアのなかで

2000年代後半から2010年代のミッレ ミリアには、44mm級の大型機グラン ツーリズモ XLや、2015年に加わったGTSラインなど、現代的で力強い系統が併存した。そのなかで8511系は42mm径という穏当なプロポーションを守り、クラシカルな計器盤デザインを受け持つ「古典側」の支柱であり続けた。ムーブメントに自社製ではなくCOSC認定のETA2894-2を選んだことも、価格と信頼性のバランスを重視した定番機らしい判断といえる。

後継への引き継ぎ

2017年のバーゼルワールドで42mmの「ミッレ ミリア クラシック クロノグラフ」168589系が発表されると、常設クロノグラフの役割は新世代へ移っていく。さらに2023年には40.5mm径・ルーセントスティール製の168619系が続いた。158511-3002は現行カタログから姿を消したが、限定の積み重ねで語られがちなミッレ ミリア史において、約10年にわたり定点を守った存在として記憶されるべきRefである。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

本Refの設計を特徴づけるのは、スポーツクロノグラフとしては薄い12.31mmのケース厚である。これを可能にしたのが、薄型自動巻きETA2892系にクロノグラフ機構を組み込んだETA2894-2の採用だ。毎時28,800振動 (4Hz)、約42時間のパワーリザーブを備え、COSCのクロノメーター認定を取得する。シースルーバックからは、汎用機であることを隠さないショパールの実直な姿勢がうかがえる。

文字盤のレイアウトもこのムーブメントに由来する。スモールセコンドを3時、30分積算計を9時、12時間積算計を6時に置く3-6-9のトリコンパックスだが、3時位置がスモールセコンドという配置は機械式クロノグラフでは珍しい。日付は4時と5時のあいだに窓を開け、外周にはタキメータースケールを配する。夜光処理されたアラビア数字とスティック針の組み合わせは、クラシックカーの計器盤を意識した同シリーズ共通の文法である。

42mmのケースは全体をポリッシュ仕上げとし、丸みを帯びた曲線で構成される。リューズにはステアリングホイールを思わせる意匠が刻まれ、自動車趣味との接続を細部で示す。そして本Refの識別点は、タイヤトレッド柄のラバーストラップではなくスティールブレスレットを組み合わせた点にある。ラバーがレースの記憶を直接想起させるのに対し、ブレスレット仕様は日常での汎用性を優先した選択であり、ラグ幅は20mmである。防水は50m防水にとどまり、本機が計測機材の記憶を継ぐ都会的なスポーツウォッチであることを物語る。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

158511-3002を含むRef.8511系のミッレ ミリア クロノグラフは、2008年頃にコレクションへ加わったとされる。WatchBaseは本Refの生産開始を2008年と記録しており、2009年には米国の通販サイトにストラップ仕様の168511-3001が掲載されていたことが確認できる。発表の場や正確な発表月を特定できる一次資料は乏しく、年次の限定レースエディションと異なり、定番モデルとして比較的静かに市場へ投入されたと考えられる。

8511系はその後、2010年代を通じてミッレ ミリアの常設クロノグラフとして販売が続いた。展開はストラップ仕様の168511系(黒文字盤の168511-3001、銀文字盤の168511-3015など)と、ブレスレット仕様の158511系(銀文字盤の158511-3001、黒文字盤の本Ref)に大別され、さらに18Kローズゴールドとスティールのコンビネーションである158511-6001および158511-6002も用意された。日本国内でも正規流通し、2010年代後半の国内カタログにも掲載が確認できる。

世代交代の節目は2017年である。バーゼルワールドでケース径42mmの「ミッレ ミリア クラシック クロノグラフ」168589系が発表され、常設クロノグラフの役割は段階的にこちらへ移っていった。さらに2023年には独自素材ルーセントスティールを用いた40.5mm径の新世代168619系が登場する。158511-3002は現在のショパール公式カタログには掲載されておらず、生産終了モデルとみられる。正確な生産終了年を示す公式資料は確認できていない。