系譜と歴史
1. 休眠からの再起
ユニバーサル・ジュネーブは1894年創業のスイス老舗で、かつて「時計の仕立屋」と称された。自社開発のムーブメントと、1958年のCal.215に始まるマイクロローター機構の先駆で知られる。だが20世紀後半に勢いを失い、長く実質的な休眠状態にあった。2023年12月、ブライトリングが同ブランドを取得し、専任チームによる再興を発表する。そして2026年、新たなコレクション群とともにブランドは市場へ戻った。この復活を技術面で支えるのが、新設計のキャリバー・ファミリーである。自動巻マイクロローターのUG-110、クロノグラフのUG-200、そして手巻のUG-111。本機は、その手巻の基幹ムーブメントとして開発された。
2. 矩形のための専用設計
カブリオレの源流は、1933年に特許を得た反転ケースの「イデオ」にさかのぼる。ケースを枠の中で回転させ、文字盤の側を伏せて風防を守るという発想であった。現行のカブリオレもこの反転機構を受け継ぎ、裏返した面にはサファイアの窓から機械が覗く。だからこそ、その機械は見せるに足る姿でなければならない。設計上の課題は、細長い矩形ケースにどう機械を収めるかである。丸型ムーブメントを矩形ケースへ落とし込めば、四隅に空隙が生じる。UG-111は、ケース形状そのものに合わせて成形された異形ムーブメント、すなわちフォルム・ムーブメントである。27×17.5mmという矩形の輪郭は、ケースの容積を無駄なく使い切るための選択であった。
3. キャリバー・ファミリーの中で
同時に発表されたUG-110とUG-200は、いずれも自動巻のマイクロローターである。これに対しUG-111は、手巻という点で性格を異にする。毎時21,600振動 (3Hz) という古典的な拍動も、薄型の手巻という性格に通じる。一方で約72時間のパワーリザーブやフリースプラング・テンプといった現代的な構成は、ファミリー全体に共通する。日付表示を持たない簡潔な時・分・秒の構成も、薄さと古典性を保つための判断といえる。手巻の異形ムーブメントは現代の市場では数が少なく、本機はカブリオレという特異なケースと不可分の存在として位置づけられる。