UG-110 HMSD
2026年のブランド復活を告げる基幹キャリバー。マイクロローターの系譜を継ぐ薄型自動巻である
Cal. UG-110は、2026年に復活したユニバーサル・ジュネーブが、その第一歩として送り出した自動巻キャリバーである。1958年のCal. 215以来のマイクロローター機構を、現代に継承する。厚さ3.8mm、直径32mmという薄型設計を実現する。毎時28,800振動 (4Hz) で駆動し、ツインバレル(2つの香箱)により約72時間のパワーリザーブを備える。本稿のHMSD仕様は、時・分・秒に日付を加えた構成である。復活の中心を担うポールルーター・デイト39mmやディオラミックに搭載される。ローズゴールド製のマイクロローターは、サファイアの裏蓋越しに意匠を見せる。
| Maker | Universal Geneve |
|---|---|
| Reference | UG-110 HMSD |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Power reserve | 72 h |
| Movement ⌀ | 32 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. 復活への布石
Universal Genève(ユニバーサル・ジュネーブ)は1894年創業の老舗であり、20世紀半ばに最も影響力を持ったスイスのメゾンの一つである。クロノグラフのコンパックス、ジェラルド・ジェンタが手がけたポールルーター、そして「Le Couturier de la Montre(時計の仕立屋)」の異名で知られた。だが多くの名門と同じく、クォーツ危機の中で活動を止めた。
2023年12月、その名はブライトリングの親会社であるパートナーズ・グループの傘下に入った。長く眠っていたブランドの再起である。そして2026年4月、ポールルーターを筆頭とする復活コレクションが発表された。Cal. UG-110は、その復活を技術面から支える中核の自社キャリバーとして登場した。
2. マイクロローターの系譜
ユニバーサル・ジュネーブの技術的な代名詞は、マイクロローターである。ローターを地板に埋め込み、ムーブメントの厚みを抑えるこの機構を、同社は1958年のCal. 215「Microtor」で実用化した。当時として最も薄い自動巻の一つであり、1960年代のCal. 1-66はさらに薄さを追求した。
Cal. UG-110は、この系譜を現代に引き継ぐ。文字盤に刻まれた「Microtor」の銘は、復活したポールルーターが過去の延長線上にあることを示す。3.8mmという薄さは、この機構選択の必然的な帰結といえる。
3. 設計と製造、そして展開
Cal. UG-110の設計と開発は、ブランド自身の構想による。製造はフルリエのスイス専業メーカー、LTM(Le Temps Manufactures SA)が担うとされる。すなわち、ユニバーサル・ジュネーブ専用に作られる専有キャリバーである。
表示機構には複数のバリエーションがある。本稿のHMSDは時・分・秒と日付を備える版であり、ほかに日付を持たないHMS版、秒針も省いたHM版が存在する。クロノグラフ機構を統合した兄弟キャリバー、Cal. UG-200も同時に発表された。マイクロローターとクロノグラフという、ブランドの二つの看板を現代に並べている。発表から日が浅く、世代交代や改良の歴史はこれからの蓄積を待つことになる。
技術解説
マイクロローターの構造
Cal. UG-110の核心は、地板に埋め込まれた小型のローターにある。一般的な自動巻は、地板の上を全周するセンターローターを持つ。これに対しマイクロローター(微小な巻き上げ錘)は、ムーブメントとほぼ同じ平面に収まる。部品の積層が減り、3.8mmという薄型が成立する。
このローターは、ムーブメント直径(32mm)の約75%を占める。中心から偏らせて配置され、回転はボールベアリングで支持される。巻き上げは一方向式である。素材にはローズゴールドが用いられ、ギヨシェ彫りが施される。
マイクロローターは質量が小さく、巻き上げ効率の確保が設計上の論点となる。偏心配置と一方向巻きは、その解の一つにあたる。75%という大径のローターは、小さな質量を回転半径で補い、巻き上げトルクを稼ぐ。一方向巻きには、効率を保つための切り替え機構が組み合わされる。ムーブメントを上から覆う錘がないため、輪列や仕上げを遮らず見せられる。薄さと視認性の両立こそ、この機構が選ばれる理由である。
なお直径32mmという寸法は、復活コレクションの39mmと37mmという二つのケース径に共通して収まる。
ツインバレルと歩度の基盤
約72時間という持続時間は、ツインバレル構成によって支えられる。香箱(主ゼンマイを収める部品)を2つ備える方式である。単一の香箱より多くの巻き量を確保できる。長時間の駆動と、安定した動力供給を両立する狙いがある。
テンプ(時を刻む振動体)は、毎時28,800振動 (4Hz) で動く。1秒あたり8回の振動に相当する。耐衝撃性と精度のバランスに優れた、現代の標準的な歩度である。ムーブメントは耐衝撃機構を備えるとされる。
仕上げと仕様
仕上げは複数の技法で構成される。コートドジュネーブ(ジュネーブ縞)、ペルラージュ(円形装飾)、面取り(アングラージュ)、そしてサテンと鏡面の使い分けである。これらはサファイアの裏蓋を通して鑑賞できる。ギヨシェ彫りのゴールド製マイクロローターが、視覚的な中心となる。
表示はHMSD、すなわち中央の時・分・秒針と日付を備える。HMSDとHMS版・HM版の差は、この日付と秒の表示輪列の有無にある。基本設計を共有しつつ、表示機能だけを変える構成である。現時点で公式は石数を公表していない。クロノメーター等の外部認定の取得も告知されていない。これらは今後の公表を待つべき項目である。