系譜と歴史
グラスヒュッテの名を継ぐ製造所
モリッツ・グロスマンは、ドイツ・ザクセンの時計の町グラスヒュッテに拠点を置く独立系製造所である。社名は、19世紀のグラスヒュッテで活躍した時計師カール・モリッツ・グロスマン(1826-1885)に由来する。彼は友人フェルディナント・アドルフ・ランゲに招かれてこの地に移り住み、1878年に設立された時計学校の共同設立者としても知られる。2008年、クリスティーネ・フッターがこの名を継ぎ、製造所を立ち上げた。2010年に初の腕時計ベンウを発表し、同時に自社製手巻キャリバー Cal. 100.0 を世に送り出した。201系は、この100系で確立した設計思想を受け継ぐ。
ステンレス鋼のための一手
グロスマンの時計は、その多くが貴金属ケースで仕立てられてきた。Cal. 201.1 が宿る ATUM Pure 系列は、ステンレス鋼を素材に選んだ系列である。鋼の持つ即物的で技術的な性格に合わせ、ムーブメントにも専用の仕上げ「Pure Classic」が与えられた。貴金属モデルが金無垢の受石座に石を収めるのに対し、Pure Classic では白サファイアの軸受石を地板へ直接圧入する。装飾を削ぎ、機構そのものへ視線を導く設計である。201系は、この鋼のための一手として開発された。
201.0 から 201.1 へ
WatchBase は 201.0 と 201.1 を別キャリバーとして登録する。公式は両者を「Cal. 201.0 / 201.1」とまとめて紹介し、テンプまわりのヒゲ持ち軸受を 201.0 で最適化したと記す。両者の主要諸元は共通で、毎時18,000振動 (2.5Hz)、42時間のパワーリザーブ、20石、187点の部品という値を分かち合う。製品としての ATUM Pure 各エディション、すなわち Pure M、Pure Skull、Pure H などには 201.1 が搭載される。世代差は微細な調整機構の改良にとどまると伝わる。
同時代のなかで
201系の振動数は毎時18,000振動 (2.5Hz) で、現代の標準的な毎時28,800振動より低い。低振動のテンプは大きな振り角でゆったりと往復し、古典的な運針の表情をもたらす。これは性能の優劣ではなく、グロスマンが選んだ設計の方向である。同じグラスヒュッテには複数の製造所が並び立ち、各社は地板の構成や脱進機、仕上げの流儀にそれぞれの解を持つ。201系は、その中でプッシャー始動の手巻機構という独自の作法を体現する。