本文へ
CALIBER · MORITZ GROSSMANN

100.1

手巻 Handwound Analog

2013年、自社製グロスマンテンプとプッシャー式の針合わせを得た、グラスヒュッテ手巻の基幹キャリバー

OVERVIEW · 概要

キャリバー 100.1は、グラスヒュッテのモリッツ・グロスマンが2013年にATUMで発表した手巻キャリバーである。前身100.0を土台に、自社で完結して製作するグロスマンテンプと、プッシャーで操作する針合わせ機構グロスマン・ワインダーを加えた。振動数は18,000vph (2.5Hz)、パワーリザーブは42時間、20石、198点で構成され、5姿勢で調整される。地板から受けに至る部材は未処理のジャーマンシルバーで、ポケットクロノメーターに倣う2/3プレートを採る。ATUM各種のほか、パワーリザーブ表示の100.2、暦を備える100.3など派生の基点となった。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerMoritz Grossmann
Reference100.1
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency18,000 bph (2.5 Hz)
Jewels20 石
Power reserve42 h
Movement ⌀36.4 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

復興と自社製テンプへの到達

モリッツ・グロスマンは、19世紀グラスヒュッテの時計師カール・モリッツ・グロスマン(1826-1885)に名を由来する。2008年、時計師クリスティーネ・フッターが商標を再登録し、グロスマン・ウーレン社として再興した。2010年、最初の時計BENUがキャリバー100.0とともに登場する。柱で支える構造、ジャーマンシルバーの2/3プレート、手彫りのテンプ受け、金張りのシャトンといった現行の意匠は、この100.0で定まった。

100.1は、その100.0を土台に二つの主題を掘り下げたキャリバーである。第一は振動子で、100.0が外部供給に頼っていたテンプを、グロスマンは自社で完結して製作できるよう設計し直した。これがグロスマンテンプである。慣性の調整しやすさと、空気抵抗および質量の抑制を両立させる狙いをもつ。

グロスマン・ワインダーという解

第二の主題は、針合わせの操作性であった。手巻時計は平均して週に一度時刻を直す。グロスマンの時計師は、この日常動作の確実性を高めることを課題とした。

その答えがグロスマン・ワインダーである。リューズを軽く引くと針合わせモードに入り、機械が止まる。リューズはすぐ元の位置へ戻るが、回せば針を精密に動かせる。針を合わせた後は、リューズ脇のプッシャーで運針を再開させる。針位置を乱さずに巻上モードへ復帰する仕組みである。これにより、針合わせ中のケースへの塵の侵入と、リューズを押し戻す際の針位置のずれという二つの誤差要因が避けられる。

100.1を基点とする系譜

100.1は、その後の派生の母体となった。パワーリザーブ表示を加えた100.2、ジャンピング機構の日付を備える100.3、ムーブメントを文字盤側へ映した107.0が、いずれも100.1の輪列(歯車列)・脱進機・ワインダー構成を受け継ぐ。一方、後年の102.0は18歯のガンギ車をもつ独自脱進機と21,600vph (3Hz)を採り、100.x系とは別の方向を示す。2/3プレートは、グラスヒュッテで広く用いられる3/4プレートとは異なり、ポケットクロノメーターの構成を現代に引くグロスマンの標識となっている。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

2/3プレートと柱構造

100.1は、地板と2/3プレートを二本の柱と香箱受けで隔てる柱構造をとる(香箱=主ゼンマイを収める部品)。これはグラスヒュッテのポケットクロノメーターに見られた構成で、当地で一般的な3/4プレートとは趣を異にする。プレートと柱は未処理のジャーマンシルバーで、経年で独特の色合いへ変化する。香箱に蓄えた力は、満巻で42時間の持続をもたらす。

グロスマンテンプ

振動子は直径14.2mmのグロスマンテンプである(テンプ=振動を刻む輪)。リムには4本の慣性ねじと2本の片重り修正ねじが配され、等間隔の孔が空く。頭部長の異なるねじを孔へ挿すことで慣性モーメントを段階的に変えられ、孔自体も減量と片重り修正に使える。テンプ軸はハブと一体の滑らかな円筒で、必要なら容易に交換できる。ヒゲゼンマイ(テンプに復元力を与えるばね)はNivarox 1製で、内端を四分円のオーバーコイルとし、ゲルステンベルガーの幾何に倣う80番のブレゲ終端曲線をもつ。

振動数は18,000vph (2.5Hz)である。これは1時間あたりの半振動の数を指し、毎秒5回の半往復、すなわち2.5Hzに相当する。グロスマンは、精度が高振動数だけで得られるものではないとし、伝統的な緩やかな歩度を選んだ。低い振動数はテンプの消費エネルギーを抑え、ゆったりとした運針音をもたらす。脱進機(エネルギーを等時に解き放つ機構)はレバー式で、テンプ受けは一端のみで支える片持ち構造をとる。そこへ載るグロスマンのマイクロメーターねじで緩急を微調整する。テンプ受けと脱進機受けの彫りは、すべて手作業による。

ワインダー・モジュールと仕上げ

針合わせと巻上を担う輪列は、独立して取り外せるクラッチ・ワインダーとして組まれる。針合わせ時には秒針を止めるストップセコンドが働く。

仕上げは多層にわたる。地板には幅広の横縞(グラスヒュッテ・リブ)が引かれ、最大の歯車である角穴車(主ゼンマイを巻く歯車)には3連の渦巻き仕上げが施される。軸受けに用いるのはルビーではなく無色のサファイアで、隆起した金のシャトンに収まり平頭ねじで留められる。この隆起構成は歴史的なグロスマンの懐中時計に倣ったもので、地板を傷めずに軸受けを個別に外して清掃できる。輪列の歯やレバー、ばねの稜線には、手作業で鏡面の面取りが施される。2/3プレートと受けに刻まれる銘や文字も、例外なく手彫りである。調整は5姿勢で行われる。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references