「ありがとう」から始まった企画
MB&Fの腕時計は、その複雑さと仕上げゆえに高額である。創業者マキシミリアン・ブッサーには、それを買えない友人や家族、そして製品を支える職人たちがいた。彼らに自分の作品を届けられないことへの、ある種の引っかかり。その思いが、手の届く価格の並行ブランドという構想を生む。
着想自体は2014年に遡るとされる。MB&F本体に注力するなかで一度は立ち消えになり、2020年から2021年にかけて設計が詰められた。数百本が用意されたが、それはMB&Fの名を冠さない。エンジニアリングも仕上げも本流と同列には置けないからこそ、別の看板を選んだ。名はM.A.D.Editions——同社のM.A.D.Galleryが扱う「機械仕掛けの芸術」の世界に連なる命名である。