1975年、貨幣を腕に
始まりは商品ではなく、贈り物であった。1975年のクリスマス、当時メゾンを率いた三代目ジャンニ・ブルガリは、上得意の顧客へ特別な一本を贈る。金無垢のケースに液晶表示を収めたデジタル時計で、ベゼルには「BVLGARI」と「ROMA」の文字が刻まれていた。古代ローマの貨幣の縁を思わせる刻印である。わずか100本ほどがつくられ、市販されなかったこの「ブルガリ・ローマ」は、買うことのできない時計として評判を呼んだ。宝飾店ブルガリが、紳士用の時計という新しい領域へ踏み出す気配が、ここにあった。