100.2
2013年に登場した、独自のパワーリザーブ表示を備えるグラスヒュッテ・グロスマンの大径手巻
Cal. 100.2は、ドイツ・グラスヒュッテのMoritz Grossmannが手がける自社製の手巻キャリバーである。2013年のBENU Power Reserveに初搭載され、先行するCal. 100.1にパワーリザーブ表示を加えた世代にあたる。直径14.2mmの大径グロスマン・テンプを18,000vph (2.5Hz)で駆動し、パワーリザーブは42時間。26石、227部品からなり、無処理のジャーマンシルバー製2/3プレートに手彫りの彫金を施す。リューズと押しボタンで時刻を合わせるグロスマン・ワインダーを備え、BENU Power Reserve各種やPower Reserve Vintageに搭載される。
| Maker | Moritz Grossmann |
|---|---|
| Reference | 100.2 |
| Type | Handwound |
| Display | Analog |
| Frequency | 18,000 bph (2.5 Hz) |
| Jewels | 26 石 |
| Power reserve | 42 h |
| Movement ⌀ | 36.4 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Small Seconds |
| Additional | Power Reserve Indicator |
系譜と歴史
グラスヒュッテの再興とCal. 100の誕生
Moritz Grossmannの名は、19世紀グラスヒュッテの時計師カール・モリッツ・グロスマン(1826-1885)に由来する。彼はレバー脱進機に関する論文で1866年に英国時計協会の賞を受け、1878年のドイツ時計学校の設立にも関わった人物である。だが死後に工房は途絶え、名は長く眠っていた。2008年、時計師クリスティーネ・フッターがこの名の商標権を取得し、ブランドを再興する。2010年9月、最初の腕時計BENUと、その心臓である自社製手巻キャリバーCal. 100.0が発表された。
100.1から100.2へ
Cal. 100.0は、以後のキャリバー群の土台となった基幹設計である。続くCal. 100.1では、新設計の振動系であるグロスマン・テンプと、省スペース化したグラスヒュッテ式コハゼが導入された。本記事のCal. 100.2は、この100.1を発展させ、パワーリザーブ表示を加えた世代にあたる。2013年に発表されたBENU Power Reserveへ初搭載され、ブランドはこれを第2世代のBENUと位置づけた。残量を示す棒状の表示は、かつてのグラスヒュッテ観測時計の機構に着想を得たものとされる。針合わせを押しボタンで完結させるグロスマン・ワインダーも、この世代の見どころとなった。
独立マニュファクチュールとしての立ち位置
Grossmannは、同じグラスヒュッテのA. Lange & SöhneやGlashütte Originalと異なり、大資本の傘下に入らない独立系として歩んできた。Cal. 100.2に見られる大径テンプ、金無垢シャトン、手彫りの受けといった意匠は、腕時計よりむしろ同地の懐中時計の伝統に連なる。針までを自社で手作りする姿勢は、量産効率とは別の価値観に立つ。Cal. 100.2は、その思想を一本の手巻ムーブメントへ凝縮した存在といえる。
技術解説
Cal. 100.2は、Moritz Grossmannの基幹手巻キャリバーであるCal. 100系の一員で、直径36.4mm、厚さ5.4mmと、現代の手巻ムーブメントとしては大柄な構成を持つ。部品点数は227、石数は26石で、うち3石をねじ留めの金無垢シャトンに収める。設計の骨格は、フレームピラー(柱)で主板と2/3プレートを隔てるピラームーブメントであり、5姿勢で調整される。
振動系とテンプ
調速を担うのは、独自設計のグロスマン・テンプである。直径14.2mmと大径のテンプ輪に、慣性調整用の4本と片重り調整用の2本のねじを配し、リム上の穴を等間隔に開けて姿勢差を抑える。振動数は18,000vph (2.5Hz)と、現代の標準より緩やかな歩度に置く。ヒゲゼンマイ(渦巻状の調速ばね)はNivarox 1製で、終端にブレゲ巻上げ(オーバーコイル)を備える。緩急の微調整は、片持ち式のテンプ受けに装着したグロスマン・マイクロメーターねじで行い、振動系の平衡を乱さず追い込む。
香箱とパワーリザーブ表示
Cal. 100.2の機構的な核心は、Cal. 100.1へパワーリザーブ表示を加えた点にある。ラチェット車(角穴車)の下に遊星歯車を用いた差動装置を組み込み、巻上げ量と放出量の差を取り出して、文字盤の細い棒状窓へ伝える。満巻時は表示が白一色となり、ぜんまいが解けるにつれて有色のセグメント(機種により赤または青)が現れる。香箱には改良型のグラスヒュッテ式コハゼ(止め爪)を備え、巻上げ後にラチェット車をわずかに戻し、ぜんまいの張力を緩めるバックラッシュを持たせる。
グロスマン・ワインダーと巻上機構
時刻合わせには、リューズと並ぶ押しボタンを用いるグロスマン・ワインダーを採用する。リューズを軽く引くと針合わせモードへ切り替わり、同時にテンプが止まる。リューズはすぐ定位置へ戻るが、回せば針を動かせる。時刻を定めた後、押しボタンでムーブメントを再始動させると、巻上モードへ復帰する。これにより、リューズを押し戻す際の不用意な針ずれと、引いた間の塵の侵入という2つの誤差要因を避ける。巻上機構はモジュール式で個別に取り外せ、保守性にも配慮される。
仕上げ
地板と2/3プレートは無処理のジャーマンシルバー(洋銀)で、横方向の幅広いグラスヒュッテ・ストライプを刻む。ラチェット車には3列のスネイル仕上げを施し、テンプ受けと脱進機受けは手彫りの彫金で飾る。受けのねじは、青ではなく熱処理で紫がかった色へ焼き戻す独特の技法を用いる。これらは販売向けの装飾ではなく、各部品を手作業で仕立てる製造哲学の現れである。