系譜と歴史
グラスヒュッテの再興とCal. 100の誕生
Moritz Grossmannの名は、19世紀グラスヒュッテの時計師カール・モリッツ・グロスマン(1826-1885)に由来する。彼はレバー脱進機に関する論文で1866年に英国時計協会の賞を受け、1878年のドイツ時計学校の設立にも関わった人物である。だが死後に工房は途絶え、名は長く眠っていた。2008年、時計師クリスティーネ・フッターがこの名の商標権を取得し、ブランドを再興する。2010年9月、最初の腕時計BENUと、その心臓である自社製手巻キャリバーCal. 100.0が発表された。
100.1から100.2へ
Cal. 100.0は、以後のキャリバー群の土台となった基幹設計である。続くCal. 100.1では、新設計の振動系であるグロスマン・テンプと、省スペース化したグラスヒュッテ式コハゼが導入された。本記事のCal. 100.2は、この100.1を発展させ、パワーリザーブ表示を加えた世代にあたる。2013年に発表されたBENU Power Reserveへ初搭載され、ブランドはこれを第2世代のBENUと位置づけた。残量を示す棒状の表示は、かつてのグラスヒュッテ観測時計の機構に着想を得たものとされる。針合わせを押しボタンで完結させるグロスマン・ワインダーも、この世代の見どころとなった。
独立マニュファクチュールとしての立ち位置
Grossmannは、同じグラスヒュッテのA. Lange & SöhneやGlashütte Originalと異なり、大資本の傘下に入らない独立系として歩んできた。Cal. 100.2に見られる大径テンプ、金無垢シャトン、手彫りの受けといった意匠は、腕時計よりむしろ同地の懐中時計の伝統に連なる。針までを自社で手作りする姿勢は、量産効率とは別の価値観に立つ。Cal. 100.2は、その思想を一本の手巻ムーブメントへ凝縮した存在といえる。